不整脈チーム(黒木健志、須藤洸司、田中裕也、朝比奈千沙)
2021年11月に黒木医師が当院へ着任し、常勤医によるカテーテルアブレーションが開始されました。さらに2022年1月より須藤医師が加わり不整脈班が発足、2022年4月からは不整脈研修施設の認定も取得し、バルーンシステムを使用したアブレーション(クライオバルーン、ホットバルーン、レーザーバルーン)も開始されました。その後2022年12月からは田中医師、2023年4月からは朝比奈医師が参加し、現在は主にこの4人体制で不整脈に関するあらゆる診断・治療に対応しております。ペースメーカや植込型除細動器、左心耳閉鎖デバイス等も積極的に行っています。
カテーテルアブレーション
薬物抵抗性・症候性の不整脈の多くがカテーテルアブレーションにより治療可能です。足の付け根の血管からカテーテルという管を心臓まで挿入し、不整脈の原因となっている心臓の筋肉の働きを抑制します。高周波やクライオといった熱エネルギーによるアブレーションは既に確立された治療法ですが、2024年より本邦でもパルスフィールドアブレーションが導入されます。高周波と比較して周辺臓器(神経・食道など)への影響が少なく安全性の高い点が期待されています。
ペースメーカ/植込型除細動器
心拍数が遅くなり日常生活に支障をきたすような場合は、ペースメーカという機器が必要となることがあります。従来型の経静脈ペースメーカは、ジェネレーター(電池)を左前胸部の皮下ポケット内に留置し、リード(電線)は静脈を介して心臓内に固定するというものでした。近年、右心室(心臓の中)に直接本体を留置するリードレスペースメーカが使用可能となりました。それぞれのメリット・デメリットがありますので患者さんの病態に応じて適切なデバイスを選択します。
突然死のリスクを伴う致死性不整脈に対し、当院では埋込型除細動器(ICD)による治療を積極的に行っています。従来型は経静脈ペースメーカと同様に前胸部皮下にジェネレータを留置し静脈を介して心臓までリードを進めて固定をするタイプです。一方、近年ジェネレータを左側胸部(脇腹)に留置しリードを前胸部の皮下に通すことで、手術リスクおよび感染時のリスクが少ない完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)が使用可能となっております
経皮的左心耳閉鎖術
心房細動とは、心臓の中の心房という部屋が不規則かつ高頻度に興奮する不整脈です。心房細動が起きると、心房内で血液がうっ滞することで血液の固まり(血栓)が形成されやすくなります。その血栓が脳の血管に詰まると脳梗塞を起こすことがあり、重篤な後遺障害や死亡に至る可能性があります。心房細動の患者さんにおいては、脳梗塞のリスクに応じて血栓をできにくくする抗凝固薬を内服する必要があります。ただしその中で出血リスクの高い患者さんにおいては、抗凝固薬の継続が困難な場合もあります。心房細動による血栓の90%は、左心房の中の左心耳という袋状の構造の中に生じます。経皮的左心耳閉鎖術は、カテーテルを通して特殊な器具を左心耳の入り口に留置し、左心耳を閉鎖する治療法です。脳梗塞のリスクを低減し、抗凝固薬を大半の方で中止することができます。
診療実績
2021年 | 2022年 | 2023年 | ||
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カテーテルアブレーション | 心房細動 | 7 | 131 | 217 |
カテーテルアブレーション | その他 | 0 | 57 | 69 |
合計 | 7 | 188 | 286 |
2021年 | 2022年 | 2023年 | ||
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経静脈ペースメーカ | 新規 | 37 | 37 | 25 |
リードレスペースメーカ | 新規 | 2 | 13 | 21 |
埋込型除細動器 | 新規 | 5 | 8 | 10 |
完全皮下埋込型除細動器 | 新規 | 2 | 1 | 2 |
両室ペーシング治療 | 新規 | 4 | 8 | 7 |
埋込型心電計 | 新規 | 2 | 9 | 2 |
経静脈ペースメーカ | 交換 | 13 | 15 | 26 |
埋込型除細動器 | 交換 | 6 | 3 | 4 |
両室ペーシング治療 | 交換 | 2 | 6 | 5 |
合計 | 73 | 100 | 102 |